はじめに──測量現場から届いた切実な声
「公共測量の案件は増えているのに、経験者の採用が追いつかず、やむなく受注を断ることもあります。
1人で操作できる自動追尾トータルステーション(TS)を導入したいのですが、本体だけで500万円超。
本当に補助金で“半額”になるのでしょうか?」
近年、測量・土木業界では深刻な人手不足が続いています。
本記事では、特に自動追尾型トータルステーションを使った1名体制の測量導入を検討している企業に向けて、以下のポイントを分かりやすく解説します:
- 省力化投資補助金〈カタログ注文型/一般型〉の違いと申請のコツ
- 自動追尾TSを導入して工数50%削減を実現した採択事例
- スマホLiDARや地上型レーザースキャナとの使い分けと補助対象の考え方
- 採択を勝ち取るための「人手不足エビデンス」と「賃上げ計画」の書き方
補助金の活用は、単なる資金援助ではなく、持続可能な現場改善の第一歩です。
次章から、制度の全体像と申請のポイントをわかりやすく解説していきます。
“ワンマン測量”が現場を変える3つの理由

自動追尾トータルステーション(TS)の登場により、測量作業は「2人1組」から「1人でも完結」できる時代へ。
その効果は、人件費の削減だけでなく、安全性・作業効率にも及びます。
項目 | 従来方式(2名) | 自動追尾TS(1名) | 主な効果 |
測量体制 | オペレータ+プリズム保持者 | オペレータ1名で完結 | 人件費 最大50%削減 |
---|---|---|---|
コミュニケーション | 声かけ・手信号が必須 | 自動追尾で不要 | 騒音現場でもスムーズ |
データ処理 | 手入力 → CADへ転記 | 点群データ ⇒ クラウド自動連携 | 再測量ほぼ不要に |
📱 スマホ測量も選択肢に
近年では、スマホLiDARアプリ(例:OPTiM Geo Scan)や地上型レーザースキャナの精度も向上。
軽作業や災害調査など、一人で完結する“ワンマン測量”の選択肢が急拡大しています。
「省力化投資補助金」2つの申請方式を比較
ドローンやTSなどの測量機器を導入する際に活用できる「省力化投資補助金」には、以下2つの申請方式があります。
比較項目 | カタログ注文型 | 一般型(オーダーメイド型) |
補助率 | 1/2(小規模:2/3) | 1/2(※7,500万円超は1/3、小規模:2/3または1/3) |
---|---|---|
補助上限(従業員数別) | 200/500/1,000万円(賃上げ達成で最大1,500万円) | 750万〜8,000万円(賃上げ達成で最大1億円) |
対象設備 | 製品カタログ掲載品(自動追尾TS、清掃ロボなど) | 自由設計(ドローン+LiDAR+解析SWなど一式) |
申請難易度 | 比較的やさしい | やや難しい(書類多め) |
メリット | 申請受付が通年で柔軟、スピード申請が可能 | 様々な機器を組み合わせて導入可能、拡張性が高い |
- スマホ測量アプリ単体はカタログ未掲載
→ ただし、外部LiDARセンサー付きiPadなどハードウェア一体型なら、一般型で採択実績あり - カタログ注文型は準備がシンプル
→ GビズID・事業確認通知書があれば2〜3週間で申請可
次の章では、どちらの補助金が自社に合っているかを「目的別」に分かりやすく解説します。
新事業向きか? 現場改善向きか? 判断のヒントを得てください。
導入事例:自動追尾TSで工数・残業を大幅削減
事例:東北の測量会社(従業員12名)
項目 | 導入前(2名体制) | 導入後(1名体制) |
現場人員 | 2名 | 1名 |
---|---|---|
出来形測量 | 1日あたり2現場 | 1日あたり3現場 |
年間残業 | 約480時間 | 約160時間 |
残業コスト | − | 年間150万円削減 |
- 設備費:本体480万円+アクセサリ40万円
- 補助金:カタログ注文型で260万円を受給(補助率1/2)
- 回収期間:補助事業実施後 約3年で投資回収
- 審査加点の工夫:
労働生産性CAGR(年平均成長率)3%超を、
「工数50%削減+付加価値15%増」の数値根拠で明示
スマホ&レーザースキャナの活用動向と補助金適用のヒント
現在は、自動追尾TSだけでなく、スマホや地上型レーザースキャナを使った“多様なワンマン測量”の選択肢が広がっています。
機器 | 活用シーン | 補助金適用のヒント |
スマホLiDAR (Geo Scan等) | 粗モデリング、土量計算、災害現場の現況把握 | 外部センサー一体型のiPad等で申請すれば、 「一般型」で採択実績あり |
---|---|---|
地上型レーザースキャナ | 出来形測量、トンネル・地下構造物の計測 | カタログ注文型に多数掲載 → 補助率1/2、小規模は2/3 |
自動追尾トータルステーション | 日常測量(坪量、出来形、公共測量等) | カタログ掲載多数、交付決定から最短1か月で納品も可能 |
- スマホ測量(±5〜10cmの精度)は、仮設計や概算ボリューム確認に最適。
- 自動追尾TS(公共測量対応の高精度)は、1/5,000図面作成など精度要求が高い現場向け。
このように、補助金を活用することで、最新の測量技術を無理なく導入することができます。
次章では、採択率を高めるための「人手不足エビデンス」や「技術的妥当性の証明方法」をご紹介します。
“落ちない”申請書に共通する3つのエビデンス

補助金申請では、「人手不足です」と書くだけでは不十分です。
- 求人倍率:ハローワーク求人票に対する応募数(例:応募数 ÷ 求人数)
- 残業時間・有給取得率:勤怠システムのCSVデータをグラフ化して提示
- 受注辞退件数:見積管理表などから、辞退・未対応案件を数値化(=機会損失)
“リアルな”賃上げ計画のつくり方
補助金加点項目である賃上げ計画は、「形だけ」では逆効果になります。
実現可能で、かつ納得感のある計画にすることが重要です。
- 基本加点要件:給与総額 年平均+3%
- 大幅賃上げ枠:年平均+6% → 補助上限が1.5倍に拡大
- 残業代を減らした分を技能手当へ振替し、給与総額を維持・向上
- 3年先までの人員計画・利益計画とセットで提出
- 未達時の返還リスクも社内で事前共有し、計画の実効性を担保
導入までのスケジュール早見表(カタログ注文型)
フェーズ | 担当 | 期間の目安 |
型番確認・見積取得 | 貴社+販売店 | 約2週間 |
---|---|---|
応募申請書作成・提出 | 貴社 | 約1か月 |
交付決定 → 発注 | 貴社+販売店 | 約1週間 |
納品・検収 | 貴社+販売店 | 約1か月 |
実績報告 | 貴社+販売店 | 約1か月 |
補助金入金 | – | 約3~4か月後 |
“一般型”でドローン+点群DXをまとめて導入する手順
以下は、ドローン+LiDAR+解析ソフト導入の一例です。
- 対象設備:UAVレーザードローン+GNSS受信機+点群解析ソフト
- 総投資額:2,400万円 → 補助金1,200万円で実質負担半額
- 効果指標:出来形作成時間60%短縮/外注費年間200万円削減
- 必須資料:ROI試算・運用フロー図・3社見積比較書など
提出前の最終チェックリスト
以下を確認すれば、申請書の精度と信頼性が一気に上がります。
- 見積書の型番・仕様がカタログと完全一致しているか
- 人手不足の定量データを3種類以上添付しているか
- 賃上げ計画と損益計画が整合性を保っているか
- 導入期日に十分な余裕があるか(※受注生産機器は注意)
- 債務超過の可能性がある場合は専門家に相談しているか
- 自動追尾TSの導入で測量工数は50%削減、受注件数は大幅増加
- 省力化投資補助金は、
⮕ カタログ注文型で手軽に、
⮕ 一般型でDX投資まで一括支援可能 - 成功のカギは、
「数字で示す人手不足」×「実現可能な賃上げ計画」
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中小企業診断士
田中 寛也 (Hiroya Tanaka)
建設業に特化した経営コンサルティング会社「タタアイズ」代表。売上と利益を改善する直接的な支援に強みを持ち、地域の中小企業の持続的成長をサポートしている。
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